司法書士となり、相続登記手続きに携わってきて24年程なりました。民法の相続の規定も時たま記憶が定かでなくなり、難しい事件に遭遇すると条文を読み返したり、相続の本を読み返したりする程度で済ませてきましたが、一念発起して、もう一度相続の本を読み直そうと思い立ちました。
仕事の暇をみながら少しずつ書き足していこうと考えております。当然のことながら浅学菲才の身ですので、間違いも多々出てくると思いますが、そのときはご指摘くださることをお願い申しあげます。
人が死亡すると、その人の所有する財産及び財産上の法律関係が他の人に移転します。これが広義の意味の相続です。(この場合は遺言による財産の処分も含まれます。)
狭義の相続は、その死亡した人と一定の親族関係にたった者がその財産上の法律関係を法律上当然に承継することを言います。
家族は、相続財産の形成にあたって様々な形で協力している場合があり、その場合には、家族は相続財産に対して実質的な持分を有しているといえる。相続は、被相続人の財産に潜在する家族の持分を具体化する機能を果たす。
相続は被相続人の死亡によって開始する。(民法第882条)
旧民法では、家督相続の開始原因として
現在は死亡のみが相続原因となる。
死亡には、自然死亡と失踪宣告による擬制的な死亡がある。
死亡の時期は、自然死亡の場合は医学的に死亡が確認された瞬間である。通常は戸籍等に記載された死亡年月日時刻をもって死亡時期も確定される。
失踪宣告による死亡
同時に死亡したとみなされる場合は相互に相続しない。ただし、代襲相続は生じます。
死亡した数人中のその一人が他の者の死亡後もなお生存していたかどうか明らかでないときは、同時に死亡したものと推定されます。(民法第32条の2)
相続は被相続人の住所において開始する。(民法第883条)
この規定は裁判管轄権を定める意義がある。
以上は、昭和56年1月1日以降に被相続人が死亡した場合です。
昭和23年1月1日から昭和55年12月31日までの間に被相続人が死亡した場合。
兄弟姉妹の直系卑属が代襲相続する場合、子がいなければ孫、ひ孫と無制限に遡って代襲相続します。
昭和22年5月3日~昭和22年12月31日までの間に被相続人が死亡した場合。
代襲相続については、兄弟姉妹については適用されなかった。
昭和22年5月2日以前に非相続人が死亡した場合は旧民法の適用を受けます。
旧法は家の制度の上に立って長男子一人相続を原則とする家督相続の制度を認めていました。戸主の所有する財産は、その家の家長たる地位を継ぐもの(長男子)が優先してその地位につき、これに対し、家族の所有する財産はあくまで個人的私有財産であり遺産相続(現在の相続と似ています。) が行われた。
(2)旧法の相続人
旧法の家督相続は単独相続であり、その相続順位は法定されています。
1.第1順位
法定の推定家督相続人が相続人になります。
同一戸籍にある戸主の直系卑属の一人に限られます。(直系卑属のうち、親等の近い者、男、年長者を優先させます。)
原則として、長男子単独相続主義です。
家督相続の放棄は許されていません。(旧法第1020条)
代襲相続はあります。
2.第2順位
指定家督相続人
第1順位の相続人がない場合、被相続人が指定した者が相続人になります。
指定家督相続人は相続の承認放棄は自由でした。
3.第3順位
選定家督相続人
その家にある父、次いで母、これもないときは親族会が選定した者。
①家女たる配偶者、②兄弟、③姉妹、④家女でない配偶者、⑤兄弟姉妹の直径卑属の中からこの順序に従って選定されます。
4.第4順位
同じ家にある直径尊属
親等の近い順、同親等では男が先です。
相続の放棄は許されます。
5. 第5順位
親族会が親族、家族等の中から、それもなければ裁判所の許可を得て他人の中からも選定できます。(旧民法985条)
旧法上の継子 = 配偶者の子で婚姻当時配偶者の家に在り又は、婚姻中にその家に入った者をいいます。
継親子関係を生じても継子と継親の血族との間には親族関係は生じません。しかし、継子となった後に出生した継子の直系卑属は家を同じくするときに限り法定血族となります。(継親と継子の子は祖父と孫になります。)
継父母が継子の家にあるときに出生した子は継子と兄弟姉妹の関係になります。
旧法上の庶子 = 父が認知した非嫡出子
嫡母と庶子 = 父の妻で庶子の母でない者とが家を同じくするときに、その両者の関係を言う。
嫡母と庶子との間には実親子関係と同一の親族関係を生じます。嫡母の血族と庶子の間には親族関係は生じません。
(3)相続資格の重複
先例では、孫が祖父母の養子となった場合、子としての相続分と孫としての相続分を合わせて取得するとしています。
義兄弟姉妹間で結婚した場合、配偶者としてのみ相続分を取得するとしています。